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采配のゆくえ個人ファンサイト。三成、吉継贔屓に活動中。
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拍手に置いていた小説。吉継×三成です。
二人でお茶を飲みに行く、ほのぼのなお話です。



 *****
今日という日。




「あ、今通り過ぎて行った女の子、吉継をちらちら振り返りつつ見てるぞ」
「へえ?」

三成が吉継の袖をくいくいと引っ張る。
右後ろだよ、と言われ、ちらりとそちらに目を向ければ、たたっ、と何やら慌しげに駆けていく足音。
吉継が自分を見たのだと思った女子が、顔を真っ赤にして駆けていったのだ、と教えてくれた。
二人で城下町を歩くのは随分と久しぶりだった。買い物は全て家人に任せ、余程の用事がない限り自宅から一切外に出ない吉継を、見るに見かねて三成が外に誘ったのだ。
光を失った視力で外に出るのは…と渋る吉継に、俺がいるじゃないか、と三成は即答し、そして今三成はその言葉の通り吉継の「目」になっている。
新しい店が出来たのだ。とか。あそこに猫が居るよ、とか。
あ、子猫が居る。あれは、あの猫の子供だろうか、とか。
三成が喋る度にその光景が脳内に思い描かれる。視力を失う前はよく二人で繰り出した城下町だ。おそらく細部は違うのだろうが、脳はその風景をよく覚えていた。
記憶の中の三成が笑って、記憶の中の声のままで、あれやこれやと丁寧に吉継に「風景」を教えてくれる。

(随分と。手馴れたものだ)

しみじみと吉継はそう思う。
視力を完全に失って。しばらく三成はただあたふたとするだけだった。いや、あたふたと表現するのは適切ではないかもしれない。表面上はあくまで冷静にしよう、という姿勢は伺えたのだから。だが、その内心が荒れ狂っているのは吉継には全てお見通しだった。伊達に親友を何年もやってはいない。
お茶を持って来てくれるのはいいのだが、それが何処に置かれたのか、それを吉継は知る事が出来ない。トン。という音に湯のみが置かれたのを知る事は出来ても、それが「どこか」を知る事は出来なかった。かといって不用意に手を伸ばして湯のみを倒してしまっては申し訳ない。結局じっとしているしかない吉継に、三成は「飲まないのか?」と問いかけて――ハッ、と気付いてからのあの慌てようはなかった。物凄い勢いで謝られたものだ。
見えなかったが、おそらくは土下座くらいはしていただろう。
後は守秘義務のある書状を、目の前で読んでくれようとした事もあった。いくら三成の立場でも読んでいいものとそうでないものは存在する。本心からの親切で読んでくれようとした相手の行為を止めさせるのは偲びなかったが、説得して説明してなんとか理解して貰えた。直通の部下に読んで貰うから大丈夫だ。となんとか宥めて。他にもこれでもかと色々な出来事があった。
とにかく自分の役に立とうと、何か出来ないかと心を砕いてくれた。もう、あれからどの位時が経過したのか。
今ではこうして袖の端を持ち、自分を安全に誘導出来るまでに三成は成長した。
なんだか感慨深い。

「―――」

だが。

「吉継。吉継?どうした?」
「ん?」
「いや。なんだか、ぼーっとしてたからな。…ほら、もうすぐ目当ての茶店に着くぞ。そこの和菓子が本当に絶品なんだ」

はしゃぐ声。それが最近、遠く聞こえるようになってきた気がする。
視力の次は聴力なのだろうか。このままゆるゆると五感の全てを失い、やがては自分の全てを失うのだろうか。
考えても、詮無い事だ。それはわかっている。今でこそこうして外を出歩く事も出来るが、それも何時までかわからない。いずれ、は必ず来るのだ。それが今日なのか、明日なのか。わからないが、確実に。自分の体は崩壊へと向かっている。
だが、それは普通に過ごしていたとしても同じ事だ。誰だって、明日死ぬかもしれない状況で今を生きている。

「三成がそんなに絶賛するのなら、さぞや美味しいのだろうね」

楽しみだな、と相手に告げると、笑う気配が伝わってきた。
視力を失い。聴力を失い。
いずれは味覚を失うのだとしても。
それでも、今日は茶店で友人と甘味を食べれるのだ。

「ああ、とても美味しいぞ!」

袖を引っ張る手に、ほんの少しだけ力が込められたのを見て。
ああ。私は幸せだな。と吉継は心から思った。
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