忍者ブログ
采配のゆくえ個人ファンサイト。三成、吉継贔屓に活動中。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

拍手に置いていた小説ですー。
関ヶ原のその後。高虎と三成のお話です。



 *****
婿取り合戦。





関が原の合戦が終り、奇跡的に死人も出ず、これでいいのかと正直かなり突っ込みたい気持ちもあったのだが、まあ全体的には丸く収まった。
天下人になる機会を惜しげもなく家康に譲り渡し、元通り治部という職に戻った三成。後は元通り平和な日々が来るかと思いきや――

あの戦い。あれで周りが三成の有能さを認めてしまった。今までは評価の大半が有能さを妬むやっかみ混じりのものばかりだったから、有能だという噂はあっても噂半分、誇張半分としか周りは思っていなかった。
…のだが。
あれで勝利してしまった事により、その噂以上の実力を三成が持っている事が周知の事実となった。
三成は年頃の若い男である。しかも有能なのは折り紙つき。
家康の膝を地面につかせた男。役職ある立場。若さ。将来の有望さは想像して有り余る程。
そして、年頃の娘を持つ親はそこらにゴロゴロ居る。

よって。
ここに年頃の娘を持つ親達の、三成争奪戦が始まった。

「石田殿ぉぉぉぉぉ!!お頼み申します、どうか、どうか姿絵だけでもぉぉぉ!!」
「うちの娘は齢十にも満ちませんが、これが素晴らしく器量のいい娘でしてー!!」
「十だと!?なに、うちの娘はまだ齢八ですぞ!ピチピチですぞ石田殿!どうですか!どうですかー!!」
「なにをう!?そんな小娘よりも、うちの娘の方がナンボも上じゃい!今年で齢三十八!年上娘の魅力ですぞ!」
「「「「それもう娘って呼ばないだろう!!!」」」」

あれから、毎日がこんな調子だ。
その度に逃げては隠れ、逃げては隠れてを繰り返して来たが、いかんせん三成は体力はないに等しい。連日のこの騒動で、体力も気力も尽きかけてきていた。ヨロヨロと今日もなんとか群がる父親(もはや鬼)を振り切り、左近の待つ隠れ部屋にと戻る。自室には戻れない。必ず誰かが待ち構えているからだ。
ああ。仕事をしに登城しているはずなのに、何故俺は鬼ごっこ(しかも複数対一)をしているのか。
こうして一見壁にしか見えない隠し部屋にと入らなければ、仕事が出来ない状況なのはどうしてなのか。いくら結婚する気はない、と告げても、あの鬼達は都合の悪い事は全て右耳から左耳に聞き流すのだ。捕まれば最後、取って食われそうで三成は怖くて仕方がない。たまに父親と娘がワンセットで向かって来る事もあるのだが、その血走った目に見詰められる恐怖ときたらもう筆舌に尽くしがたい程だ。

「…あれ?」

よたよたと壁に手をつき、くるりと回転させた部屋にと入った瞬間、見えた背中に三成は目を瞬かせる。見知った、左近の背中ではない。あの蔦の紋は―――

「あん?」
「と、藤堂殿?」

居たのは藤堂高虎だった。いつものように物差しを手に部屋の中央で突っ立っている。

「…なんだよ。何か用か」
「い、いや、あの。ここは、俺が仕事部屋として使っているのですが――」
「仕事部屋?いやいや。ここはずっと以前から俺の部屋だぞ」

トン。と物差しで自分の肩を叩き、こちらを見詰めてくる高虎。

「つか。よくここの部屋の存在を突き止められたなァ。ここは忍とかを使う俺用に、特別にあつらえさせた部屋だってのに」
「…この城の設計図を見てて、不自然な空間に気付いたもので…。何かあるのかな?と調べているうちに、仕掛けに気付いてしまいました。それからは、俺の仕事部屋として使っていました」
「…。へえ。ああ、そうか。アンタそういえばそんなトボけた顔しているが、一応能吏だったもんな」

よく見つけたもんだ、と高虎は感心する。
事実、ここの仕掛けはかなり難解だ。壁になんらかの特徴があるわけでもなく。そして、扉を開けるのにも一手間二手間とは言えない手間が掛かる。その分安心出来る隠し部屋でもあったのだが。まさかこうして見つけられるとは。

「ま、いいや。とにかくアンタ、出てけ」
「え」
「ちょいと出かけている間に部屋を乗っ取られているとは思ってなかったが、とにかくここは俺の部屋なんだよ。俺も色々とやる事あるし、アンタが居ちゃ仕事が出来ん。忍だって呼べねえし」
「ちょ、ちょちょっと待って下さい!」

しっしっ。と犬でも追い払うように手を振られ、三成は慌てる。

「俺、ここを追い出されたら困るんです!」
「なんでだよ。アンタならもっと待遇のいい部屋いくらでもあるだろう。つーか自分の部屋はどうした。そっちで仕事すりゃいいじゃねえか」
「じ、実は―――」

そういえば、関が原から数ヶ月。藤堂の姿を見る事はなかった。
久々に帰ってきたら自分の部屋がありませんでした。じゃ、確かに不機嫌にもなるだろうが、こちらだって引けない事情がある。
三成は正直に事の顛末を話した。

「…と、いう訳なので、すみませんがしばらくここの部屋を貸して下さい」
「却下」
「即答!?」
「あのなァ…俺は忍を使うんだっての。その俺が何処でもほいほいと忍と会話するわけにはいかねえだろう。敵の忍とか居たら筒抜けもいいとこじゃねえか。俺はこの部屋が必要で、自分で設計して許可貰って増築したんだよ。仕事に差し支えるから、無理。お前が他あたれ」
「で、でも、あの人達、怖いんです!」

三成は悲鳴を上げる。
この数ヶ月、この部屋だけが三成の心のオアシスだった。頭では高虎の言葉の方が何倍も正しいとわかってはいるのだが、それでもこのオアシスから出たくはない。
出たら最後、婚姻を!!と迫る鬼達が自分目掛けて突進して来るのだ。その光景といったらもう、最近では夢にも見る程である。すでにトラウマだ。
物差しを額にあてて、はああ、と高虎が溜息を吐く。

「あのなー…。アンタ、関が原でもっと怖い思いいっくらでもしただろ…?」
「それとこれとは別なんです!藤堂殿はあの人達を知らないから…!」

思い出して身震いする三成をじっと見詰めて。
高虎は少し考えてから、その口を開いた。

「…つまりは。アンタがそいつらに追っかけ回されなくなるようにすれば、いいんだよな?」
「え?……あ、はい。そうです」
「よし解った。なんとかしよう」

言って、くるりと踵を返す。

「一日だ。一日だけ、ここを貸してやる。だが、明日には此処を引き渡せよ。何度も言うが、ここは俺の部屋なんだからな」

ぽかん、としている三成を残し、さっさと隠し部屋から出て行く高虎。
そして。その言葉の通り。

翌日には、状況は激変していた。




「……一体。どうやったんですか」

隠し部屋。その中で。
三成と高虎が向かい合わせに仕事をしていた。
三成は治部の仕事を。高虎は本人曰く「秘密」の仕事を。

翌朝。廊下を歩いていた三成は、ある一人の男と鉢合わせした。自分の娘を嫁に嫁に!としつこく何度断っても食い下がってきていた一人だ。思わず身構えた三成だったが、相手はこちらを見るなり、ぎょっとしてそそくさと逃げ出していってしまった。他、数人の父親ーズに出会ったのだが、どの父親も以下同文。その内の一人なんぞ、三成を見た途端マッハとも呼べる速度で逃げ出して行ってしまう始末。
思わず首を捻ってしまうのも、当たり前の反応だろう。

「んー。ひ、み、つー」

さらさらと筆を滑らせていきながら、高虎はとぼけた反応を返す。

「つか。出てけ、っつっただろうが。俺の努力水の泡かよ」
「どんな手を使ったのか、教えて下されば、すぐに出て行きます」
「秘密だっつってんだろ。まあいい。どうせ居るんなら手伝え。まずはここの計算」
「ああ、ここは、こうです」

差し出した文に、すぐさま筆が走る。
ちらりとそれを一瞥し、合っている事を確認し、ひゅう。と高虎は口笛を吹いた。

「さっすが」
「…藤堂殿。本当に、何をしたのか教えて頂けませんか。結構本気で気になってるんです」
「いや。俺はなんにもしてねえよ」

「俺」は。と内心で付け加える。
実際手を下したのは、忍だ。

とにかく、「石田三成に近づいたら不幸になる」という噂をばらまかせた。相手から近づいて来るのなら、相手が近づかないようにすればいいだけの事。そして噂をばらまかせた後はひたすら実行。石田三成の姿を求めて庭を探しまわっていた一人を池に蹴り倒し、石田三成を探して廊下を歩いていた相手の足元にガラス玉を転がしてすっ転ばせ、石田三成を探していた一人を忍の術を使い迷子にさせた。最後の一人なぞは勝手知ったる城の中で迷った事にかなり怯えたようだ。ある程度ぐるぐるとさせた後は術を解いて解放してやったが、「石田三成に近づくとボケが来るのが早くなる」という噂が追加されたのには、高虎も腹を抱えて笑った。
そんな事を一日これでもかとやりまくった結果、誰も三成には近づかなくなった。
とりあえず、これでしばらくは平穏に過ごせる事だろう。
なのに。

「…なー。俺、忍呼べないんだけど」
「俺が居ない時に呼べばいいじゃないですか。俺も、別に此処に入り浸っている訳じゃないんですし。書簡とかを届けに結構行き来しますし」
「いや、そーゆー問題じゃねえんだよ」

なんで、まだ居座ってやがるのか。しかも案外居心地は悪くないときた。
有能なのがまた憎たらしい。下手に役立つせいで、追い出す切っ掛けも掴めない。

「ここは、静かでいいですねえ」

にこ。と微笑んで、そんな事を言うものだから。
もういいや。と高虎は言いかけていた全ての言葉を飲み込んだ。





終。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
[117] [116] [115] [114] [113] [112] [111] [110] [109] [108] [107]
テンプレ作った人:おみそ
今すぐブログ始めるなら:[PR]

PR:忍者ブログ
カレンダー
05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新コメント
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析